皆さんこんにちは!
今回は、ファミリーマート西早稲田二丁目店を運営されている、市川秀さんへのインタビュー後編です。
昨日配信のコラムに続き、〈”学生との交流&街の変化”編〉と題して、学生との関わり方や街の変化などについてのお話をお届けします。
―学生との交流はありましたか?
―開店から10年程の間は、早稲田大学の学生をアルバイトとして雇っていました。サークル内で、先輩から後輩にアルバイトを引き継いでくれていたので、そうした人脈でお店を動かすことができていましたね。ですが最近では、アルバイトの多くはベトナムやフィリピン出身の子たちで、学生のバイトはほとんどいなくなってしまいました。
学生さんはお客さんとしてお店をよく利用してくれていますが、一緒に働く機会が減ってきてしまっていることは残念に感じています。学校では学べないようなことを、仕事を通して教えたい、という思いがあるので……。もっと一緒に働きたいと思っていますが、学生にとってのバイトの目的や働き方が、時代とともに変化しているので、こればかりは難しいですね。仕事を通じてお客さんに喜んでもらい、それに嬉しさを覚えるという経験をしてほしい、そんな経験ができる場所にしていきたい、という思いは抱いています。
お店に限らず、街と学生との交流という点でも、難しさを感じています。学生は4年間で卒業し、入れ替わってしまいますよね。いわば、学生たちは「駅伝」、街で商売を営む僕たちは「フルマラソン」をしているような状態です。学生時代の4年間という短い期間で、街に愛着を持ってもらうことがとても難しいんです。早稲田でアルバイトなどをしていた学生であれば、卒業後に戻ってきてくれることもありますが、そうした交流が難しくなってきてしまっているのが現実です。
―なるほど……。たしかに、私の地元のコンビニでも、外国人の店員さんが増えているように感じます。また、学生時代の限られた時間で、街への愛着や地域の方々との絆を育むのが難しい、というお話にも共感しました。私たちのように、地域ボランティアサークル等に所属していれる学生であれば、街の方々と交流する機会がありますが……。学生と街をつなぐ取り組みが何かできないか、改めて考えてみようと思います。
学生の変化というお話がありましたが、市川さんの目から見て、早稲田の街はどのように変化してきましたか。
―正直に言うと、少しずつ殺伐としてきてしまっているように感じます。この前早稲田で、自転車に乗っていた女性が転んでしまったのですが、周囲の人が素通りしている光景を見かけました。昔なら、誰かが声をかけていたように思います。だんだんこの街も、色々な意味で「都会」になってきているということなのかもしれません。一人ひとりを見れば良い人が多いんですが……。早稲田の街の「魅力」として挙げた「温かさ」や「人情味」といったものが、残念ながら少しずつ失われてきてしまっているように感じます。
早稲田という土地柄ならではの商売の難しさも、背景にあると思います。先ほども述べたように、学生は4年ごとに入れ替わってしまい、卒業後に戻ってきてくれることは少なくなっています。また、お店の入れ替わりも多いです。早稲田は大学が長期休暇に入ると客足が減ってしまうため、商売の浮き沈みの大きい街です。この街で認知度を上げ、支持を得るには、最低でも5年は必要だと考えています。ですが、地域や学生との絆を築く前に、いなくなってしまうお店があるんです。
ー少しずつ 早稲田の街から、その良さが失われてしまっているんですね……。街や大学の規模がどんどん大きくなるにつれ、心の通い合った温かな関係性を築くのが、難しくなっていってしまっているのかもしれません。街の魅力をもっとたくさんの人に知ってほしい、と思っている一人の学生として、非常に残念に感じます……。
それでは市川さんは、早稲田の街に今後どう変わっていってほしいとお考えですか。
ー活気のある街になってほしい、という想いはあります。しかし正直に言うと、難しいとも感じています。昔は「活気」というと、「気合いだ!根性だ!」といったような雰囲気のことでしたが、今は違いますよね。昔は受け入れられていた言動が、今では「パワハラ」として捉えられてしまったり……。街に活気が戻ってほしいとは思いますが、どこまでが許されるのか、その線引きが難しいなと感じます。
また、小さな差別のない街になってほしいとも思います。外国人の従業員に対して、差別的な言動をされるお客さんに出会ったことがあります。何気ない振る舞いでも、差別を受けた側はとても悲しい思いをします。それを目の当たりにしたことがあるので……。そうした日常の中の小さな差別が、無くなってほしいと思いますね。
早稲田の良さは、人情味です。これが無くなったら、この街は終わりだと思っています。昔に戻ることは難しいかもしれませんが、人情味だけは無くさないでほしいですね。
ー最後に、学生と卒業生へ向けてメッセージをお願いします。
ー自分の思いに素直に従って、悔いのないようにやっていってほしいですね。就職活動もあるだろうけれど、そのためだけではなく、諦めずに、地に足つけて、自分の思ったことを素直に言ったり、挑戦したりしてほしい。
早稲田生は早稲田大学に入れるくらいなので、土台はあるはずなんです。でも、差別的に聞こえてしまうかもしれませんが、正直に言うとこのままでは、外国の子達に負けてしまうと思います。(お店で働いている)外国の子達は、日本に来るくらいだから、貪欲なんですよね。「それもこれもあれも全部教えて!」というモチベーションで来てくれるので、僕もうれしくなってついついたくさん教えちゃう。一方で、日本の子は遠慮しがちなように感じます。マナーとして踏み込んでこないところがある。このような違いから、同じ時間を過ごしても、得るものが倍くらい変わってきてしまうのでは、と思います。
卒業生の皆さんには、街を温かく見守ってくれている人が多いと思います。こんなご時世ですが、コロナが収まった頃には、1回くらい街に顔を出して欲しいですね。街の変化を見て歩くのも楽しいと思うので。
早稲田の街で長年、学生や地域の人たちと接しながらお店を営んできた市川さんだからこそ、時が経つに連れて少しずつ様変わりしていく街と人の様子を、敏感に感じ取られてきたのだと思います。
街全体の変化や、学生の知的好奇心・貪欲さの度合いを危惧する市川さんのお話は、心に刺さるものがありました。物事に対する自分自身の姿勢を反省するとともに、街の温かみや活気を受け継いでいくためにできることはないか、改めて考えたいと思いました。
約1時間ほどの取材でしたが、市川さんはひとつひとつの質問やこちらの不手際にも優しく対応してくださり、その素敵なお人柄が伝わってきました。
市川さんオススメのファミチキを、今度食べに伺います!
取材にご協力いただいた市川さんと、ご縁をつないでくださった滝吉さんに、この場を借りて改めて感謝申し上げます。ありがとうございました!
<市川さんの店舗情報>
ファミリーマート西早稲田二丁目店
住所: 東京都新宿区西早稲田2-5-16
Tel: 03-5285-3470
営業時間: 24時間
筆者 ちゃちゃ
早稲田大学政治経済学部3年
早稲田大学公認サークル
まっちワークグループ早稲田
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